ラピス・ラズリ

 アフガニスタンでは、ラピス・ラズリ(青色宝石)、エメラルド(緑色宝石) 、ルビー(赤色宝石)と、様々な種類の宝石が発見されている。最も有名なのはラピス・ラズリであり、アフガニスタンはこの宝石の世界最大の産出国の一つである。「ラピス」はラテン語で“石”を、アラビア語の「アスル」は“青”を意味する。

 この金色の斑点が輝く群青色の宝石には、遡れば長い歴史がある。ラピス・ラズリは宝石として最初に用いられ、身に付けられた石の一つである。考古学者たちは地中海地方一帯の古代遺跡から死者に添えられた装飾品を発見している。これらの多くの宝飾品はラピス・ラズリを使って作られた首飾りなどの品であり、これは何千年も前に、メソポタミア、エジプト、ペルシア、ギリシャ、ローマでラピス・ラズリを珍重していたことを物語っている。ユーフラテス川岸のウアの伝説はB.C.4000 年の頃の貿易が盛んだった事を伝えている。このラピス・ラズリは、アフガニスタンで発見され、現在も埋蔵されており世界最古の宝石取引の場となっている。

 また、ラピス・ラズリは他の文化においても聖なる石として崇拝され、特に東方オリエント諸国では神秘の力を秘めた宝石として崇められ、仏教徒にとっては心の平安と落ち着きをもたらし、悪を追うものであった。多くの紋章、指輪、スカラベ(甲虫石、古代エジプト人が護符または装飾品として用いたオオタマオシコメガネを模ったもの)などが、この青い石で作られ、アレキサンダー大王時代にヨーロッパヘ伝えられた。色は「ウルトラマリン」と呼ばれ、群青色の絵画の顔料として中世の時代まで使われてきた。「ウルトラマリン」は絵画の世界では、金に匹敵するほど価値のあるもので、実際にかつての美の巨匠たちが使ったウルトラマリンの青い塗料は、ラピス・ラズリを細かく挽いたものであった。その後、大理石に類似した宝石の原石につなぎの物質を加えたものが、水彩画やテンペラ画、油絵に適した明るい青色の塗料に加工された。1828 年にこの色が人工的に作られるまで、価値あるウルトラマリンの色は本物のラビス・ラズリから作られており、この当時の数多くの芸術作品の中に今でもその輝きを放っている。当時ウルトラマリンの青色は、大変貴重な物であり、非常に高価であった。

 他の青色の素材であれば、時の経過と共に色褪せてしまうがラピス・ラズリの顔料はそれら青とは異なり、時の試練に耐え輝きを失うことなく保ってきた。現在ではラピス・ラズリから作られる顔料は、特に修復や復元のために用いられている。ラピス・ラズリは鉱石というよりはむしろ岩石に分類される唯一の重要な宝石であり、幾つかの鉱物から成っている。主用成分はラズライト(青金石)である。ラズライトの含有量は重要であり、これが多いほど、より深みのある青となる。この成分に加え、白色の方解石や金を含んだ黄鉄鉱がある。 ラピス・ラズリを切り磨く時、多くの研磨師は顔をしかめる。宝石が切断機に触れると、忽ち独特の異臭を微かに放つからであり、熟練した研磨師はこの匂いから色の飽和度を判断する。5 万年前と同様に最高の宝石の原石がアフガニスタンには今もなお採掘されている。ラピス・ラズリはバダフシャン地方(アフガニスタンの北東部)のヤマガン峡谷で産出されている。最も有名な鉱山はサルエーサン(石の頂)と呼ばれアムダリヤ川支流であるコッチャ川上流に位置する渓谷にある。ラピス・ラズリを採掘する鉱業場は、3700 メートルから4300 メートルの高地にあり、気候条件も厳しく気温が零度を下回ると鉱山に近づくことも不可能になるため、採掘は6 月から11 月迄のみ可能であり採掘にはかなりの困難が伴う。